弊社では、引張試験および疲労試験に加え、ASTM E399に準拠した室温KIc試験のNadcap認証の取得を目指している。
金属材料の線形平面歪破壊靭性値、KIcを求める試験法であるASTM E399は1970年に制定され、修正を加えながら50年間利用されてきた。この規格は、主に、航空・宇宙用の高力Al合金、Ti合金、マルエージング鋼などの高強度鋼の靭性評価に適用されているが、高圧容器のAl合金製ライナー、Al合金を用いた3Dプリンター造形品やMg合金の靭性評価にも適用されている。 また、プラスチックの靭性評価にも、ASTM E399を基にしたASTM D 5045が適用されている。試験の依頼を受けて実施する試験所では、規格に忠実に、間違いなく実施することが重要であるが、同時に、規格の約束事の背景やその意義を理解しておくことも重要である。KIc試験には、得られた暫定破壊靭性値KQをKIcと認めるための合否判定基準が存在するが、それが定められた歴史的背景やその意義は、十分には理解されていない。
本報では、公表文献を広く調べ、KIcの合否判定基準の意義と必要性について再整理したので、テクニカルレポートとして掲載しました。