弊社では、金属の材料試験に加え、樹脂の材料試験や化学分析を新たな試験メニューにすべく、活動している。
樹脂は、通常、大きな変形能を示すが、き裂が存在すると変形能が大きく低下する。特に、非結晶性樹脂では室温下でも線形的な破壊を生じ、高力アルミ合金の破壊挙動に似ている。
き裂が存在する状態で単調載荷を受ける材料の強さを破壊靭性値と呼ぶ。線形的に破壊する場合、線形弾性平面歪破壊靭性値KIcを求める試験法が、金属材料ではASTM E399 6)、樹脂の場合はASTM D5045 7)で規格化されている。
弊社のテクニカルレポートNo.2 8)で、ASTM D5045の試験法の概要をASTM E399と対比して、説明した。ASTM D5045は、ASTM E399をベースに1990年に制定されたが、まだ、ASTM E399のようには活用されておらず、規格の根拠が不明な点も多い。
本報では、樹脂のKIc試験の力学的説明の第2報として、樹脂のKIcに及ぼす影響因子を公表文献をもとに整理し、金属と比較して考察する。 また、樹脂のKIc試験の課題について検討する。